亀の子供を捜して

　ある暑い日、水辺を歩いているとアカミミガメに出会った。何か私に話しかけている。


「山刃斎さん、山刃斎さん、ちょっとお願いがあるんですけど・・・・」
「なに？」



「うちの子供を見ませんでしたか？亀太郎と言うんですが、今年の春に生まれたばかりで、好奇心が旺盛でどこへでも一人で出かけていってしまうんです・・・・。こんな汚い水はいやだって言って昨日飛び出していってから帰ってこないんです。どうか探し出してもらえないでしょうか？」
「おいおい、亀子。山刃斎さんは忙しいお方だ。あまり無理を言っちゃいけねぇ。山刃斎さんあいすみません、家内が無理なお願いを致しまして・・・・もし、偶々出会うような事があったら、早く帰って来やあがれと伝えていただけるだけでへぇ、結構でごぜえやす・・・」
　亀吉夫婦は首を伸ばして辺りを見回し亀太郎を探しているようだった。
「・・・まあ、出会ったら伝えておきましょう・・・・」
　私は日向ぼっこなどしていないで探しに行けばいいのに・・・・と、心の中で思いながらも、亀吉夫妻の願いを聞き入れ、亀太郎を探しに歩きはじめた。
　しかし、この日はとても暑かったので、すぐに疲れてしまった。ベンチに腰掛けていると、シジュウカラガンが散歩している。



「ああ、ちょっと、」
「何かしら？」
「何かしら？」
「アカミミガメの子供を見ませんでしたか？名前は亀太郎だとか･･･」
「知らないわ」
「知らないわ」
「そうですか。もし見かけたら、早く家に帰るようにと伝えてください」

「分かったわ。私たち、このあたりをくるくるくるくる散歩しているから見かけたら伝えておくわ」
「どうも、じゃあ、宜しく・・・」
「合点承知だわ」
　ガンたちは池の周りの遊歩道をぺちゃくちゃとおしゃべりしながら歩いていった。
　ガンにばかり任せてはおけないので、私も聞き込みを開始した。

「あのー」
「何だよ？」
「亀の子供を見かけませんでしたか？」
「亀？知らんね・・・」
「アカミミガメで亀太郎と言う・・・」
「さあね」
「あのう、もし見かけたら・・・・」
「・・・食ってやるよ」
「！！・・・失礼しました。サイナラー・・・・」
　怖いなぁー、コウノトリ。それは環境を壊して住みかを奪った人間が悪いけどサ・・・。他に当たってみるか。

「あのー、お聞きしますが、亀の子供を見かけませんでしたか？」

「わたしゃあ、存じませんが、あの、岩の上の方にいる方々なら見晴らしがいいから知っているかも・・・・」
　私は岩の上を見た。




「ブスッ！チューチュー・・・・」
「いてっ！す、吸われるーっ！」


「あ～あ～・・・・・あんさん、ダメダメ、あいつらコントの練習中なんだから。聞くんだったら、ヘラサギさん達にしたほうがいいよ」
「これは御親切に、で、ヘラサギさんと言うのは？」


「なんだい？聞きたいことって？」
「あなた方がヘラサギさんですか？実は亀の子供を捜しているんです。亀太郎と言うどこにでもありそうな名前で、アカミミガメです」
「他に特徴は？」
「甲羅があって、頭があって、足が四本、尻尾が生えていると言う。あとは、俳優の渡哲○さんに似ているらしいです」
「なに？石原軍団のか？子供の癖に渡○也似だと？」
「はい・・・見かけませんでしたか？」
「ああ、それなら、あそこにショウジョウトキがいるだろ？昨日地面に向かってしゃべっていたから、何やってんだろうと思っていたんだけど、あれはもしかすると、小亀としゃべっていたのかもしれないな」
「そうですか、ありがとうございます」
　私はショウジョウトキの元へ急いだ。


「あのう、亀の子供を見ませんでしたか？」
「亀の子供って、亀太郎君の事？」
「そうです！見かけたんですね？」
「昨日の話しだけどね、何でも世界一周して来るんだって言って歩いていったわよ。私は地球って言うのはとっても大きいんだからやめなさいって言ったんだけどね、てくてくと歩いて行っちゃったわ。子供だからまだ甲羅が軽くてなかなか足が速かったわよ。でもねぇ。この辺はずるがしこくて残虐なハシブトガラスとか、カワウとかがうようよいるからねぇ・・・・。きっと食べられちゃうわよ」
　何と言うことだ！このままでは亀太郎の命が危ない！しかし、どうやって探せばいいのだ。こんな広い池の周りを。


　池の中心にはカワウがウジャウジャいる。もう食べられちゃったかも！！私は途方にくれながらも、池の周りを捜し歩いた。すると前から先ほどの散歩好きなガンが尻尾を振りながら近づいてきた。なにやらわめいている。


「居たわよ居たわよ亀ちゃん居たわよ太郎ちゃん居たわよ」
「居たわよ居たわよ亀ちゃん居たわよ太郎ちゃん居たわよ」
「ええ！ほんと！どこに？」
「あっちあっちあっちあっち・・・・・」
「あっちあっちあっちあっち・・・・・」
「ありがとう！」
　私はお散歩雁に礼を言うと亀太郎の元に急いだ。
「どこだ！亀太郎やーい・・・・」










「いたー！！」

「ついに見つけたぞ、亀太郎」


「おじさん誰？」
「俺の名は山刃斎だ。お前のお父さんとお母さんに頼まれて、探しに来た」
「僕も帰ろうと思っていたところなんだけど、道に迷った上にこの段差が大きすぎて怖いんだよー」
「そうか、帰ろうとしていたのか。この道を向こうに行けば帰れるぞ」
　私は亀太郎を植え込みに下ろしてやった。
「わーい、おじさん、ありがとう！！」

　亀太郎は素早い動きで植え込みを走った。しかし、帰り道とは違う上に、またしても遊歩道の上に出てきてしまった。

「そっちじゃない！こっちだ。しかも、歩道を歩いたら危ないからダメ！」


　私は亀太郎を植え込みに戻した。
「ちゃんと家に帰るんだぞ！気をつけてな。特にカラスと猫には気をつけろ。紫陽花に隠れながら行けば大丈夫だ。ほらほら、そんな所に登っちゃダメ、寄り道しないで帰りなさい・・・・」
「わかったー。おじさん、じゃーねー・・・・」



　亀太郎は植え込みの中に消えていった。ちゃんと家に帰る事ができるだろうか？
　私は水辺を後にした。

タグ：ミドリガメ 鳥

コメント 17

岩の上の方にいる方々は面白い顔というか、
怖い顔というか・・・
こんな鳥初めて見ました。(￢д￢。) ジーーーッ
亀太郎がカワイイですね～(^^♪
by blume (2008-06-14 16:21) 

いや～おもしろい御伽噺風に仕上げましたね。
最後はめでたしめでたしでしたね。
by 旅爺さん (2008-06-14 18:02) 

こんばんは＾＾
引き込まれちゃった～～～
亀太郎がどうなったか心配で・・・　うちの長男も亀太郎似だったからね～＾＾
無事帰れたかしらね～
それにしてもちょっとのお散歩でいろんな動物《鳥》が居たけれど･･･ここは動物園？
by mimimomo (2008-06-14 18:09) 

この間、井の頭公園で同じように、池から上がってウロウロしてるカメを見つけました。亀太郎の親戚なのでしょうか。子亀はみんな冒険好きなんでしょうか・・・。
シジュウカラガンもいましたよ。綺麗な鳥ですよね。
by HEIJI (2008-06-14 19:41) 

亀太郎、無事に帰れたでしょうか？
やさしいsanjinsaiさんに見つけられて良かったですね。
しかしあんな真っ赤なトキがいるなんてビックリです。
by 響 (2008-06-14 21:43) 

おじゃまします
元気な亀太郎、また会えると良いですね^^。個性的な鳥たちも良い味出してます^^/。
by K (2008-06-14 22:36) 

ヘラサギの嘴がいいですね。お話だイメージが湧いていいですね。
by スミッチ (2008-06-14 22:39) 

きっと、亀の恩返しがありますね＾＾
by Baldhead1010 (2008-06-15 09:22) 

すごいですね、物語をつくるとは。
結構笑えました。
ちょっと時間かかったんではないですか。
それだけに見ごたえありましたよ。
by minsuke (2008-06-15 18:24) 

こんばんは＾＾
う～ん、楽しく読ませていただきました～♪
亀太郎、かわいいですね～♪
鳥さんたちも親切で（笑）
あとは無事お父さんとお母さんの所へたどり着いたのかどうかが気になります＾＾
by まいまい (2008-06-15 22:18) 

こんばんは～
亀太郎、無事におうちに帰れたのかな～
心配です。。（笑
竜宮城にいけるかも～＾＾
by k-sakamama (2008-06-15 22:55) 

ヾ(*>∀<*●)ノ きゃは！！亀タロー無事で何より～♪
安心！安心！！読みながらドキドキしちゃったよ！
んでも、トリさん達って亀食べちゃうの？？（ちょいショックぅ～）

ほんと亀タローかわいいい！！こんなカワイイ亀ちゃん、頭にのっけて
お散歩したいなぁ♪きゃは♪
(*￣∇￣*) ちなみにロボの飼ってた亀は亀タローだったよん♪

by ロボッコ (2008-06-15 22:59) 

物語・・・美味いこと出来ていますね。
す、す、凄すぎる！

ボクも小学生の頃、緑ガメ飼っていました。
一時、ちょっとしたブームでした。
懐かしいです。
by asayan (2008-06-16 01:05) 

「ニモ」を連想させるようなストーリー♪＾＾
子亀ちゃん、家族に会えたかなぁ・・・
それにしても・・・豪華キャストです。＾＾
by まるまる (2008-06-16 10:32) 

目つきが鋭いっ☆＝
この物語を伝えたsanjinsai さんが、素敵です♪
by mee (2008-06-18 00:30) 

　blume様こんにちは。
岩の上にいる方々は、かなり怖いような、愛嬌のあるような変な顔ですね＾＾
名前は忘れてしまいました＾＾；


　旅爺さん様こんにちは。
こんなに小さい子亀に出会ったのは、縁日かペットショップくらいなものなので驚きました！


　mimimomo様こんにちは。
色々な鳥がいるでしょ？ここは上野動物園の出口の方です。
亀太郎は不忍池の植え込みにいました＾＾


　HEIJI様こんにちは。
子亀が孵化する時期なんでしょうね＾＾
生態系の乱れが心配されていますが、こんな亀太郎を見ちゃうと元気に育って欲しいと願わずにはいられません。


　響様こんにちは。
さすが動物園だけあって、派手な鳥がいるものですね＾＾
亀太郎は無事に家にたどり着いた事でしょう。元気なヤツでしたから＾＾


　K様こんにちは。
どのくらいで大人になるんでしょうね？
大きくなった亀太郎に会ってみたいものです＾＾


　スミッチ様こんにちは。ありがとうございます＾＾
動物の体は生活環境に適応して色々な形になっているんですね。
自然と言うのは凄いですね。


　Baldhead1010様こんにちは。
亀の恩返し・・・。鶴が恩返しするなら、当然亀もありですね＾＾


　minsuke様こんにちは。
この日は動物園で色々な動物達の写真を撮ったんですが、動物園を出てから本当の出会いがありましたね＾＾
ストーリーは帰りの電車の中で考えたので、それほど時間はかかりませんでした＾＾


　まいまい様こんにちは。
亀太郎はとってもたくましいヤツだったので、無事に帰りついたと思いますよ＾＾
小さかったけど、素早いし、なかなか力もありました。


　k-sakamama様こんにちは。
竜宮城で面白おかしくフナやコイの（淡水ですから＾＾；）踊りを見て暮し、気が付いたら老人になっていると言う・・・。
亀太郎は無事に帰りついたと思いますよ＾＾


　ロボッコ様こんにちは。
ロボッコ様ん家の亀も亀タローですか！
昔うちで飼っていた亀の名前はポチでした＾＾


　asayan様こんにちは。
私もミドリガメやらクサガメやら飼っていましたよ。
良く庭を散歩させたりしたものです＾＾結構素早いんですよね！


　まるまる様こんにちは。
そういえばニモにも鳥が出てきたような記憶が・・・ペリカンみたいな奴だったような覚えがあります。亀太郎も無事家族のもとへ帰り着いたと思います＾＾


　mee様こんにちは。
楽しんでいただけましたか？
鳥って結構目つきが鋭いですよね！


by sanjinsai (2008-06-18 12:50) 

亀太郎！！見つかってよかったよぅ～（＾－＾）
地面と同化してるし（笑

亀太郎物語
楽しかったです♪♪


by めぐたん (2008-06-19 09:27)